コーヒー好きの人なら、「サードウェーブコーヒー」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。しかし実は、言葉を聞いたことはあるけれど、いったい何のことなのかよくわかっていないという人も少なくないようです。そこで今回は、話題のサードウェーブコーヒーについて、徹底解説したいと思います。

サードウェーブコーヒーとは?

コーヒーが普及し始めた18世紀頃、コーヒー産業が急成長し、世界規模に発展する企業も現れました。それにともなって、コーヒーのトレンドも変化していきました。

このトレンド変化の「波」は、大きく3度押し寄せたと言われています。近年、第三のトレンドの波、つまり「サードウェーブ」が来ているとされます。

サードウェーブコーヒーは、一般的に浅煎りのシングルオリジンコーヒーのことを指し、高品質な豆を一杯ずつ丁寧にハンドドリップして淹れるスタイルが主流です。

コーヒートレンドのおさらい

多くの人から愛されるコーヒーは、その時々で流行するファッションのように、飲み方やそのスタイルに流行が発生しやすい飲み物です。

第三の波があるということは、過去に第一と第二の波がやって来たということ。ブームの変遷を詳しく見ていきましょう

「大量生産・大量消費」の第一波(ファーストウェーブ)

1800年頃から始まったコーヒー大量生産によって、コーヒーが気軽に入手できるようになった時代に起こったムーブメントです。

インスタントコーヒー、缶コーヒーなどが出てきたのもこの時代です。レストランでは、おかわり無料のコーヒーを提供するところが増え、とにかく、安くて大量に飲めるコーヒーが注目を集めました。当時、コーヒーはすべて同じ飲み物という感覚で、品質で区別することはなかったようです。

大量生産・大量消費というこの一連の流れが、ファーストウェーブとされています。

「シアトル系」の第二波(セカンドウェーブ)

第二次トレンドは、世界的なコーヒー企業が台頭した1960年頃から起こります。

コーヒーを日常的に飲むようになると、品質にもこだわりたくなるもの。そんな時に現れたのがスターバックスやタリーズなどの、いわゆる「シアトル系」と呼ばれるコーヒー店です。シアトル系コーヒー店では深煎りで高品質の豆を使ったコーヒーが人気を呼び、街中ではロゴ入りカップを片手に歩く人の姿が、日常の風景となりました。

キャラメルやチョコレートなど加えたアレンジコーヒーが現れたのもこの時代。それまでコーヒーを飲まなかった人も、おしゃれなスイーツ感覚で、コーヒーを楽しむ人が増えました。

セカンドウェーブは、よりおいしく、おしゃれなコーヒーが流行した時代といえるでしょう。

「スペシャルティ」な第三波(サードウェーブ)

深煎りの豆やアレンジコーヒーが主流だった第二次トレンドの次にやって来たのは、コーヒー豆の品質をさらに追求した新たなトレンドです。

キーワードは「サスティナビリティ(持続可能性)」と「トレーサビリティ(追跡可能性)」です。現地の労働環境に配慮し、生産者の顔が見えるものを安心して飲む、そんな作る側も飲む側も幸せになれるコーヒーのトレンドと言えるでしょう。

サードウェーブでは、コーヒー豆の本来の味わいを引き出す浅煎りで焙煎されたものが主流で、丁寧にハンドドリップで淹れるお店が多いのも特徴です。

安全性や味わいにこだわり、専門団体から認定された「スペシャルティ・コーヒー」も、サードウェーブを象徴するコーヒーと言えます。

サードウェーブコーヒーが人気の理由4つ

シングルオリジンへのこだわり

カフェや喫茶店に行くと、必ずといっていいほど置いてあるのが「ブレンドコーヒー」。ブレンドコーヒーは、産地や種類の異なる豆を、バランスよく混ぜ合わせたものです。

サードウェーブコーヒーでは、ブレンドではなく、「シングルオリジン」の豆を使います。

「シングルオリジン」とは、1つのエリア(産地)で取れたコーヒーのこと。エリアは、1つの農場を指すときもあれば、地域一帯を指すこともあるので、定義が少しあいまいですが、シングルオリジンの豆であれば、産地の個性をそのまま消費者に届ける事ができます。

トレーサビリティと品質の確保

シングルオリジンの豆は、生産者の名前から、豆の育て方、加工の方法など産地の情報を細かく確認できます。これは、サードウェーブコーヒーに欠かせない、トレーサビリティ(追跡可能性)が取れているということ。消費者側は安心しておいしいコーヒーを飲むことができますし、管理体制の整った農園で育てられたコーヒー豆は、そうでない農園のものに比べ高い品質を保てることは言うまでもありません。

浅煎りで豆本来の味わいを楽しむ

サードウェーブコーヒーは、浅煎りの豆を使うのが基本とされています。浅煎りコーヒーは、コーヒー豆本来のもつ味わい(酸味、甘み、香り)を楽しめるのが特徴です。

スターバックスに代表されるシアトル系コーヒーは、深煎りで苦みの強い味わいが特徴。こちらは第二波(セカンドウェーブ)のときにブームとなりましたが、近年では、豆の個性を損なうような深煎りよりも、豆本来の味わい感じる浅煎りコーヒーにより注目が集まっている状況です。

ハンドドリップで一杯ずつ丁寧に淹れるコーヒー

コーヒーの味は、コーヒーの淹れ方でも違いが出てきます。サードウェーブコーヒーは、この「淹れ方」にもこだわります。コーヒーの豊富な知識をもつスタッフが、コーヒー豆の種類や状態をみて、一杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れるスタイルが主流。まさに自分のためだけに作られた、スペシャルな一杯を味わえます。

サードウェーブコーヒーの代表的なお店

ブルーボトルコーヒー

ブルーボトルコーヒーは、サードウェーブコーヒーの代表的存在となっているコーヒーショップです。日本では2015年に東京都の清澄白河に1号店をオープン。現在は、京都市や神戸市など、続々と店舗を拡大しています。

ブルーボトルコーヒーでは、高品質で新鮮な豆のみを使い、熟練のバリスタが注文を受けてから一杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れています。豆の味わいを感じる優しいコーヒーが人気をよんでいます。

日本各地の喫茶店、コーヒー専門店

日本では、昭和頃から軽食とコーヒーを楽しめる喫茶店が各地で流行し、独自のカフェ文化として発展していきました。喫茶店では、サードウェーブコーヒーと同様、高品質の豆を使い、一杯ずつハンドドリップでコーヒーを提供するところが多いです。そのため、サードウェーブを昭和回帰とする向きもあります。

どうしても新しいカフェや外資のコーヒー店に目が行きがちですが、喫茶店も「高品質なコーヒー」では引けを取りません。古き良き喫茶店に足を運んで、コーヒーを飲み比べてみるのも楽しいでしょう。

高品質なサードウェーブコーヒーを楽もう

コーヒー業界で流行中のサードウェーブコーヒー。高品質の豆を使い、バリスタが丁寧にハンドドリップで淹れてくれるコーヒーは、自分だけのスペシャルな一杯です。一息つきたいときに飲めば、仕事の効率も気分もアップすること間違いなしでしょう。

カテゴリー: 歴史