コーヒー豆を選ぶ際、「ウォッシュド」「ナチュラル」などの表記を目にしたことはありますか?これらの表記はコーヒー豆の精製方法のことで、コーヒーの味を大きく左右する大切な要素のひとつです。そこで今回は、コーヒー通でも意外と知らない、コーヒーの精製方法と、精製が味に与える影響について解説します。

そもそも「精製」とは?

工場の屋上で天日干しにします

コーヒーの“精製”とは、収穫したコーヒーチェリーから“種子”を取り出して乾燥させることを言います。

「コーヒー豆」と呼ばれているため、マメ科の穀物を想像する人も多いのですが、実は、コーヒーは木になる実なのです。そのコーヒーの実から果肉を取り除き、種の部分を乾燥させる「精製」の工程を経て、コーヒーの生豆ができあがります。

精製は、コーヒー豆の味に大きな影響を与えるため、コーヒー好きなら知っておきたい工程のひとつです。精製方法は、国や地域の気候条件や、農園ごとの設備状況によって異なり、いくつかの種類にわかれています。

コーヒーチェリー(コーヒーの実)の構造

コーヒー豆の構造

本題に入る前に、基本的な知識として、コーヒーチェリーの構造について説明します。完熟すると赤い実になるコーヒーチェリーは、外側から、「果肉→ミューシレージ→パーチメント→シルバースキン→種子」の5層になっています。この”種子”が、のちにコーヒー豆として出荷されるものです。

精製では、果肉とミューシレージの扱いをどうするかによって、大きく違いが出てきます。それでは、次から具体的な精製方法について見ていきましょう。

「ウォッシュド」と「ナチュラル」の違い

代表的なコーヒー豆の精製方法に、「ウォッシュド」「ナチュラル」があります。

大まかに言うと、果肉を取ってから乾燥させる(ウォッシュド)か、取らずに乾燥させる(ナチュラル)かの違いです。これだけの違いで、コーヒーの味わいには大きな差が生まれます。機会があればぜひ飲み比べてみてください。

まずは、この2つの精製方法の特徴を詳しく説明します。

ウォッシュド(水洗処理方法)

ウォッシュドでは、収穫したコーヒーチェリーを水に浸し、実を発酵させることで果肉と粘液質(ミューシレージ)を取り除きます。その後、さらに水洗いして乾燥させます。

ウォッシュドは多くの国で採用されている精製方法です。販売されているコーヒー豆(シングル)に特に精製方法の記載がない場合は、ウォッシュドである可能性が高いでしょう。

ナチュラル(非水洗処理方法)

ナチュラルは、収穫したコーヒーチェリーをそのまま天日で乾燥させ、脱穀機で種子を取り出す方法です。昔ながらの精製方法で、現在では主にブラジルやエチオピア、イエメンなどで用いられています。果肉を残したまま乾燥させるため、コーヒーの味わいにも芳醇なフルーティさが加わります。

水を一切使わないため環境に優しいというメリットがある反面、ウォッシュドに比べて精製が難しく、欠点豆が混ざりやすいというデメリットもあります。

その他の精製方法

コーヒー豆の精製は、その他にも、セミ・ウォッシュド、パルプドナチュラル、ハニープロセス、スマトラ式などと呼ばれる方法があります。これらは基本的にウォッシュドとナチュラルの中間という位置づけですが、目的や国によって、呼び名や手順などに違いがあります。

セミ・ウォッシュド(半水洗処理方法)

セミ・ウォッシュドは、その名の通り、ウォッシュドとナチュラルを合わせた精製方法です。コーヒーチェリーの果肉だけを除去した後、天日で乾燥させます。粘液質(ミューシレージ)を残したまま乾燥させるという点が、ウォッシュドと異なります。

ただ、実際の商品としては、次から紹介する「パルプド・ナチュラル」や「ハニープロセス」のような形で記載されていることがほとんどです。

セミ・ウォッシュドは、「ウォッシュド」「セミ・ウォッシュド」「ナチュラル」といったようなカテゴリー分けの際に用いられることがあります。セミ・ウォッシュドという大きなくくりの中に、パルプド・ナチュラルやハニープロセス、スマトラ式などの種類があるイメージですね。

パルプド・ナチュラル

主にブラジルなどで使われる精製方法です。収穫したコーヒーチェリーは、「パルパー」と呼ばれる機械で果肉の除去をしていきます(パルピング)。ミューシレージは残したまま乾燥させ、その後脱穀します。

パルプド・ナチュラルは、主に未熟なコーヒーチェリーを選別する目的で用いられます。大きな機械で収穫をするようなブラジルの大規模な農場では、未熟果もまとめて収穫されてしまうため、精製時の欠点豆のピッキングが大変な作業となってしまいます。パルピングの工程では、熟した実は果肉が除去され、未熟な実は果肉が取れずにそのまま排出されるので、効率的に欠点豆を取り除くことができるのです。

ハニープロセス

ハニープロセスは中米などでよく使われる精製方法で、主にコーヒーに風味を出すために用いられます。果肉のみを除去し、ミューシレージを残したまま乾燥させます。コスタリカでは、ミューシレージをどの程度残すかによって「ブラックハニー」「レッドハニー」などと呼ばれ方が変わります。明確な基準はなく、乾燥前のコーヒーチェリーの見た目の色から分類されることが多いのですが、目安としては以下のようになります。

  • ブラックハニー:除去せず
  • レッドハニー:20-25%程度除去
  • イエローハニー:50%程度除去
  • ゴールデンハニー:75-80%程度除去
  • ホワイトハニー:90%程度除去(最もウォッシュドに近い。クリーンな味わい。)

ちなみに、「ミューシレージ」はスペイン語で「ミエル(miel)」と言い、蜂蜜も同じ「ミエル」ということから「ミエルプロセス(miel proceso)」→「ハニープロセス」と名付けられました。蜂蜜のような味わいのコーヒーという意味ではありません。

スマトラ式

スマトラ式は、インドネシア独自のコーヒー文化で誕生した精製方法です。収穫したコーヒーチェリーを、果肉だけ取り除いた状態で乾燥させます。その後、生乾きの状態で一度パーチメントを取り除き、コーヒー生豆を取り出します。生豆はまだ湿っている状態なので、ふたたび乾燥させます。乾燥途中で脱穀を行うので、コーヒーの生豆が変形を起こしやすく、スマトラ式のコーヒー豆を見てみると、いびつな形をしているものがあるのがわかると思います。

敷地が狭い農園やスコールが多い気候に合わせて、乾燥のプロセスを2回に分けているのが特徴です。

精製方法がコーヒーの「味」に与える影響

同じ銘柄のコーヒーでも、“ウォッシュド”と“ナチュラル”では、口にした時の印象が大きく異なります。それぞれの方法で精製されたコーヒーの味の特徴は次の通りです。

精製方法「味」の特徴
ウォッシュドクリーンでスッキリとした口当たり
ナチュラル芳醇な香りと甘み、ボディ感
ハニープロセス爽やかでフルーティな味わい

このように、コーヒーの精製方法は味に大きな影響を与えます。生産地の特徴と精製方法について知っていれば、自分好みのコーヒーに出会える確率がグンと上がります。コーヒーの味にこだわりたい人は、ぜひ精製についても理解しておくと良いでしょう。

コーヒー上級者なら、精製方法にもこだわろう!

“精製方法”は意外と見落としがちな要素ですが、実はコーヒーの味わいに大きな影響を与えています。コーヒー豆を選ぶ際には、産地や銘柄、焙煎度に加え、精製方法にもこだわってみてはいかがですか?

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